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姫路のタンナーをめぐる旅
2013.08.15|靴の話
科学技術が日々進歩し、これまで想像もつかなかったような素材が開発され、F1のボディが軽くなったり、ケータイやパソコンがどんどん薄くなったりと、私たちの暮らしもずいぶん変わったなあなんて思ったりもしますが、昔から靴の材料として最適かつ欠かせない物といえば、「革」なんですね
体重を支える丈夫さ、履くほどに足に馴染む柔軟さ、蒸れを軽減する透湿性、そして何より良質な革の肌理は美しいです
前置きが長くなりましたが、そんな革を兵庫県姫路市で日々生産している、とあるタンナー(革を鞣す会社)さんが、一般向けにセール&工場見学会という貴重なイベントを開催してくれたので、連休を利用してはるばる遊びに行ってきました
姫路城の東側を流れる市川という川は、水質が製革に適していたため、その沿岸では千年以上昔から伝統的な鞣し技術による「白なめし」という革などの生産が盛んに行われていて、戦後は西洋の鞣し技術であるタンニン鞣し、クロム鞣しなどに切り替わりましたが、今もたくさんのタンナーさんがあります 姫路だけで日本の成牛革の生産量の7割を占めるそうです
驚きですね
今回伺ったタンナーさんは馬革専門で、レザージャケットなど衣料用の革だけでなく、馬のお尻の部分にある高級革「コードバン」も生産している数少ない会社です 工場見学会ではこのコードバンの製造工程を追って色々説明していただきました
ちょっとグロいんですが、馬から剥がした生皮を、腐らないよう塩漬けにした状態で輸入してきた物を「原皮」といいます 写真右奥にタテガミから毛までフサフサついたままで何枚も積まれています
左に見える大きな樽のようなものは「タイコ」、中に原皮と一緒に消石灰などのアルカリ性の薬品を入れてグルグル回すことで洗い、脱毛します
こちらは「ピット槽」、主にミモザなどのタンニンの液で満たされたプールです 脱毛して裸になった皮を一ヶ月ほどこれに漬け込みます
壮観ですね! ピット槽から上げて乾かしています このあと革の裏面から徐々に削っていきます 革の表面と裏面の間に「コードバン層」と呼ばれる美しい艶を持つ層があるそうです
画像はまだ荒削りの状態だそうですが、すでにコードバン層が出ています 真ん中の筋がお尻の中心線で、左右にそれぞれ一枚ずつ楕円形のコードバンが取れます うっすらコードバンの境目が見えますね
コードバン層を染めたら、仕上げに「グレージング」という工程で、コードバン層を磨き、ツヤツヤにします 速くて写真にうまく映りませんでしたが
こういう太いガラスの棒で磨いています イタリア製の棒でとっても高いそうですよ
仕上がったコードバン
幾つもの工程を経て、何ヶ月もかけて作られる上に、原料となる馬がごく少数しか生産されない農耕馬なので、年々数が減り、当然お値段も高くなっています これ一枚から紳士靴だと取れて一足… ちなみに同じ大きさの普通の牛革の3〜4倍のお値段になります
いや〜原皮がすごい臭かったんですけど、とても楽しかったです! 生の「皮」が、丈夫で腐らない「革」に変わるメカニズムはたぶん化学の分野の難しいお話なのでよく分かりませんが、こういう技術を数千年前から連綿と受け継ぎ、その精度を高めてきたご先祖様たちはやっぱり凄いですね‼ お盆なのでご先祖様上げで締めくくりたいと思います
長々と書いてしまいましたが、次回はこのイベントで出会った姫路伝統の「白なめし」の革を作っているタンナーさんの話に続く…(予定)
靴修理と靴磨きのスピカ
バッグクリーニング、バッグ修理も
鈴木
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