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新年のご挨拶 

2011.01.02|その他の話

 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

 Spica 及び 株式会社スピカは、下記の通り年末年始休暇を頂戴いたしたく存じます。
 休暇期間中ご不便をお掛け致しますが、ご了承くださいますよう宜しくお願い申し上げます。
 2010年12月29日~2011年1月3日

 新年明けましておめでとうございます、元旦くらいは実家におりましたたなかです。
 本年も宜しくお願い致します。

 とはいえ、新年っぽい内容はさいとう&大和両氏がすでにアップしてるので、ここらで緩んだ正月気分を引き締めるとしましょうか。

 いきなりですがたなかは「御神籤(おみくじ)」が嫌いです、特にお正月のおみくじ。
 その年の気分が元旦早々決められてしまうというのも何だかなぁ、と。
 個人的には「凶」がいちばん好ましい、と思っています。
 それならあとはもう上がる、上げるしかないでしょ?

 『この世はD無しのDIO次第』 Stefano Bemer
   →DIO(神)、IO(私) つまり、全ては自分次第という意味

 『幸運の女神は前髪しかない』 Leonardo di ser Piero da Vinci
   → チャンスがやって来たら 逃さずつかめ

 『ふりむくな ふりむくな 後ろには夢がない』 寺山修司

 ふりむくと
 一人の少年工が立っている
 彼はハイセイコーが勝つたび
 うれしくて
 カレーライスを三杯も食べた

 ふりむくと
 一人の失業者が立っている
 彼はハイセイコーの馬券の配当で
 病気の妻に
 手鏡を買ってやった

 ふりむくと
 一人の車椅子の少女がいる
 彼女はテレビのハイセイコーを見て
 走ることの美しさを知った

 ふりむくと
 一人の酒場の女が立っている
 彼女は五月二十七日のダービーの夜に
 男に捨てられた

 ふりむくと
 一人の親不孝な運転手が立っている
 彼はハイセイコーの配当で
 おふくろをハワイへ
 連れていってやると言いながら
 とうとう約束を果たすことができなかった

 ふりむくと
 一人の人妻が立っている
 彼女は夫にかくれて
 ハイセイコーの馬券を買ったことが
 立った一度の不貞なのだった

 ふりむくと
 一人のピアニストが立っている
 彼はハイセイコーの生まれた三月六日に
 自動車事故にあって
 失明した

 ふりむくと
 一人の出前持ちが立っている
 彼は生まれて始めてもらった月給で
 ハイセイコーの写真を撮るために
 カメラを買った

 ふりむくと
 大都会の師走の風の中に
 まだ一度も新聞に名前の出たことのない
 百万人のファンが立っている
 人生の大レースに
 自分の出番を待っている彼らの
 一番うしろから
 せめて手を振って
 別れのあいさつを送ってやろう
 ハイセイコーよ
 おまえのいなくなった広い師走の競馬場に
 希望だけが取り残されて
 風に吹かれているのだ

 ふりむくと
 一人の馬手が立っている
 彼は馬小屋のワラを片付けながら
 昔 世話したハイセイコーのことを
 思い出している

 ふりむくと
 一人の非行少年が立っている
 彼は少年院の檻の中で
 ハイセイコーの強かった日のことを
 みんなに話してやっている

 ふりむくと
 一人の四回戦ボーイが立っている
 彼は一番強い馬は
 ハイセイコーだと信じ
 サンドバックにその写真を貼って
 たたきつづけた

 ふりむくと
 一人のミス・トルコが立っている
 彼女はハイセイコーの馬券の配当金で
 新しいハンドバックを買って
 ハイセイコーとネームを入れた

 ふりむくと
 一人の老人が立っている
 彼はハイセイコーの馬券を買ってはずれ
 やけ酒を飲んで
 終電車の中で眠ってしまった

 ふりむくと
 一人の受験生が立っている
 彼はハイセイコーから
 挫折のない人生はないと
 教えられた

 ふりむくと
 一人の騎手が立っている
 かつてハイセイコーとともにレースに出走し
 敗れて暗い日曜日の夜を
 家族と口もきかずに過ごした

 ふりむくと
 一人の新聞売り子が立っている
 彼の机のひき出しには
 ハイセイコーのはずれ馬券が
 今も入っている

 もう誰も振り向く者はないだろう
 うしろには暗い馬小屋があるだけで
 そこにハイセイコーは
 もういないのだから

 ふりむくな
 ふりむくな
 後ろには夢がない
 ハイセイコーがいなくなっても
 全てのレースが終わるわけじゃない
 人生という名の競馬場には
 次のレースをまちかまえている百万頭の
 名もないハイセイコーの群れが
 朝焼けの中で
 追い切りをしている地響きが聞こえてくる

 思い切ることにしよう
 ハイセイコーは
 ただ数枚の馬券にすぎなかった
 ハイセイコーは
 ただひとレースの思い出にすぎなかった
 ハイセイコーは
 ただ三年間の連続ドラマにすぎなかった
 ハイセイコーはむなしかったある日々の
 代償にすぎなかったのだと

 だが忘れようとしても
 眼を閉じると
 あの日のレースが見えてくる
 耳をふさぐと
 あの日の喝采の音が
 聞こえてくるのだ

 寺山修司「さらばハイセイコー」(「競馬への望郷」収録)

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 本年も宜しくお願い致します たなか

コメント(2)

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このブログ記事のコメント

すず|2011.01.02 22:25
寺山修司、好きです~。
競馬とボクシングをこよなく愛し、乙女チックもできるという幅の広さ!
詩も素晴らしいですけど、戯曲もいいですよ~。
映画は…衝撃的でした(生々しさとメルヘンの融合??)。
たなか|2011.01.02 22:40
すず 様
まさに 「言葉の錬金術師」ですよね。 「あしたのジョー」の作詞なんかもされてましたね。

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